11月8日(月)
今、フィレンツェへ向かう列車の中。
今朝のヴェネチアはすごい雨で、水路と地面の高さがほとんど同じになっていた。
帰りの水上タクシーは、天井を閉めて、おとなしく席に座る。
細長い窓から見る曇った景色が |
移動の列車のなかは、数時間あるので、ずっと仕事をしている。
途中で飲み物やスナックのサービスがあった。結構、うれしい。一等車は、新幹線のグリーンと同じくらいきれいで
サービスもいいけど、隣のボックス席の人と目が合うのがなんとも(汗)。やっぱり、東洋人って少ないから、仕事のため
にパソコンを開いたりすると、なんとなくチロチロ見られる。日本語が印刷されてる画面に興味がある様子。
隣のボックスに座っていたおじいさんに、私がつけているメタルをほめられた。
このメタル、フィンランド航空のスチュワーデスさんにも、「どこで買ったの?」と機内でわざわざ聞かれたのよね。
これは今年のハワイで買ったもので、最近いつもつけているお気に入り。
やっぱり、私のジュエリーブランドのはじめのシリーズはメタルのタイプにしようっと。決まり。
フィレンツェに着いた。ホテル 「SAVOY」は、中心地のとても便利なところにある。
ブラブラ歩いて、ポンテベッキオ橋の上にあるジュエリー街へ出かけた。
楽しい~♪ 何度来ても楽しい。 デザインの参考にも^^ |
11月9日(火)
朝ごはん、このホテルはパンが充実。
甘くて小さなデニッシュが……13種類ある。おやつ用にもいくつかいただいた。
外は雨。美術館の日に雨でよかったね、と話す。これはこれでしっとりと落ち着く。
ところで、美術館の日本語の音声ガイドって、いまいち意味がわからない日本語の文章が多いですよね。
原文をそのまま訳したという感じで、ひとつの文章が長すぎたり、聞いている途中で意味がわからなくなることが多い。
「カインとアベル」とか「イサクの犠牲」とか、「サロメ」など、聖書物語に昔からよく出てきていた絵のお話は、学校での
基礎知識からあるからわかるけど、ほとんどの絵はガイドを聞いただけではわからない。
ウフィッツィ美術館……、ママさんは何度来てもここで素晴らしい気持ちになるらしく、
想像以上にいろいろなことを知っていて、絵や額についてもいろんなことを教えてくれた。
「私、やっぱり前世ではここで修復士をやっていたんだと思うわ。だって、ママの昔からあこがれの職業が
修復士だったでしょ? それに、趣味がテンペラの宗教絵画の模写よ? 前世は男性でフィレンツェにいた、
って言われたこともあるし。」
たぶん、本当にそうなんだろうと思う(笑)。
たしかに、ママさんは、作ったり描いたりもすごく好きだけど、なにかを修理するのが昔から素晴らしく上手で
好き。たとえばそれは、私のスカートのすそ上げ、というような「お直し」的な簡単なことに始まり、ジャケットの
ボタンを好きな物につけかえたり、刺繍を直したり……。
見ている側としては、「そういうのは修理屋さんに出したほうが、面倒がなくていいんじゃない?」と思うんだけど
そういう作業自体が好きなんだって。旅先にも、夜寝る前になにか縫う物、手を動かすものがあると落ち着くんだって。
変わってる~、と思うけど、そういうのが、前世からの縁ということなんだろう。
ママさんのおかげで、洋服などで「ここがもう少しこうだといいんだけどな」という部分は、そのままで着たりせず、
一番好きな状態に工夫することを学んだ。たとえば、ワンピースのリボンだけ取り替えるとか、気に入らないところは
とってしまうとか、肩ひもをはずして後ろで交差させるなど。
どんなブランドのものでも「ここがもう少しこうだったらいいんだけど……」というようなことはあるものだ。
だから、洋服って、オーダー以外は、自分に合うように手を入れる、というのが普通だと思っていた。
なんだか、すごく納得。もし、私自身が修復士だったら、せっせと自分でやったんだろうけど、私は実際に手を
動かして作るのは向いていないので、そばにいる修理士にあずけるのだ(笑)。
11月10日(水)
ミラノのドゥオーモへ。
晴れたので、クーポラ(丸天上)の上にも登った。フィレンツェのドゥオーモは、私の好きな映画、「冷静と情熱のあいだ」
の最後のシーンで、あおいと順正が再会するドゥーモだ。
登りの階段は、上に行けばいくほどどんどん細く狭くなり、
「この辺で頂上かな? そろそろ終わり? いや、そんなはずない? もしや、まだ先がある?」 という期待を裏切らず、
限りなく上に続いている。 一番最後はクーポラの丸い部分に合わせて体を曲げながら進む。
頂上♪
「なんだか……魂が喜んでるってこういうことだと思う」 なんて、珍しくママさんがウルウルしている。
去りがたいとはこのこと。
これは、今回のイタリア旅行のベスト3に入る。
午後は、ピッティ宮殿に行った。
その中にある銀器博物館を見たかったのだ。
私たち、こういうものが本当に好き。ひとつの部屋だけで、何時間も過ごせる。
「この中で、ひとつだけいただけるとしたら、どれにする?」っていう、いつものあの遊びをやった。
こういうものを見ていると、なんだか……気持ちが焦る。なんだろう、これ。
早くいろいろしなくちゃ、という気持ちだ。これは学生の頃からそう。
ジュエリーや宝飾品の美術館を見ると、いつもこの気持ちになる。
隣のパラティーナ美術館では、ラファエロの「大公の聖母」と「椅子の聖母」を見た。
ヨーロッパの美術館って、素晴らしいものが山のようにあって、ひとつひとつを見るのがおざなりになる。
ラファエロの名画ではなくても、すぐそこにかかっている絵、ひとつひとつが本当に素晴らしい。
宮殿の奥にあるボーボリ庭園はさらっと見た。
夕方、部屋に戻った途端にすごい夕立。雹も降ってきた。
広場のメリーゴーラウンドが雨に濡れて光ってる。でも、空は明るい。
10分後に光が差し→夕焼け |
11月11日(木)
フィレンツェに来てから、曇り空が続いていたけど、今日はスカッと晴れている。
予約していたアカデミア美術館に行った。
この美術館は石像がメインなので(ミケランジェロのダビデ像とかね)、実はあまり興味がなかった・・・
ので、暗い展示室にある絵画のコーナーを見てまわっていたのだけど、その薄暗い部屋の角を曲がったら、
そこに、なんと! ママさんが10年近く前に、はじめてテンペラで模写した絵の本物があったのだ!!
へ~、びっくり。ママさん、大感激。
だってその絵は、ママがはじめて模写した記念の絵画で、当時のママが、絵画集の中から選んだお気に入りの絵
だった。特に有名なものではないから、それがこの美術館にあるなんて知らなかったのに、こんなところで出会うなんて。
こういうのって、自分だけにわかる、ものすごい感動の感覚よね。思い出の一枚との出会いだからね。
やっぱり, |
午後は、ドミニコ会の修道士が住んでいた修道院へ行く。
修道士の各個室にイエスのフレスコ画が描かれている。十字架にかけられたイエスの流血シーンの絵など。
修道士の世界って、かなりドロドロしてそう(笑)
「神に仕える」という名目を隠れみのにして、人の足の引っ張り合いをしたり、ホモがうじゃうじゃいたり、権力争いが
頻繁に起こっていたらしい。昔、そういう本、読んだな。
修道院の中庭と回廊
サン・マルコ美術館からメディチ家の礼拝堂まで歩いて、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会に行く。
世界最古で女の子には有名なサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局にも行った。
香水やポプリの石鹸などを買う。
ディナーの席で、ママさんとしみじみ話す。
今回の旅行、私にとっては 「ママさんをイタリアに連れてくる来るためにあった」と思う。
ママさんが、前世、修復士だったことを思い出すことによって、ジュエリーデザインに対しても気持ちが盛り上がる、
そのために私がこの旅行をアレンジしたのだろう。
だって、ヨーロッパで行ったことのない国に行ってもよかったのに、「なんでまたイタリア?」と思っていたし、
フィレンツェにもイタリア自体にも、それほど「縁」は感じない。
たくさんの美術館や街自体の雰囲気を、もちろん素敵だし素晴らしいとは思うけれど、
それは名画や美術品を見たときの普通の感動であって、特別な感覚は特にないのだ。
そしてママさんも、これまでのイタリアではなく、今回のイタリアで気付いたことに意味があったんだろうな。
ママさんの前世発見に 乾杯♪ |
2010年11月